主催者からのメッセージ

美しい自然に囲まれ古の歴史も深い基山町。 この度 私が育ったこの町で、丸久様始め多くの方々のご厚意とご援助を賜わり、個展を開催する運びと成りましたこと 心より感謝申し上げます。 　幼少期 この地が持つ豊かな自然は私の感性を大いに磨いてくれました。 小学二年生の時に触れた習字で墨の魅力を知った私は、画家 岩田専太郎の弟子であった叔父が遺した絵を夢中で模写しました。振り返ると私の水墨画の原点はそこにあったように思います。 　伸びやかに、また力強く自在に走る筆あと、墨の濃淡による奥深い表現。 水と紙の存在によって、ときに作者の意図を越えて偶然が生み出す表現の まさにそれらは水と紙に生かされた創作なのです。 しかし長い歴史を持ちながら、現代人が水墨画に親しむ機会は減り、墨や筆 にふれることさえ日常的ではなくなりつつあります。 　今日まで、近隣都市の水墨画講師を勤める傍ら、国内外の美術展に出展して参りましたが、「このままでは伝統が途絶えるかもしれない」という危機感から、今後は墨の文化を次世代へ継承するために小学校への墨絵の出前授業にも力を入れて参りたいと思っ ています。 　水墨画と呼ぶ場合、原則として、墨の黒と紙の白で表現し色彩をしないものです。しかし今回は、色彩も施した墨彩画の花鳥画、古典画、現代風景画など より親しみ易い作品を展示しております。つたない作品ですが、どうぞ肩の力を抜いて御観覧くださいませ。 中村 紫苑